ごあいさつ

第64回全国国保地域医療学会の開催にあたって


岩手県国民健康保険団体連合会 理事長

山本 正德(岩手県:宮古市長)

 本年1月の「令和6年能登半島地震」により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、そのご家族や被災されました皆様に心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。また、被災地の一刻も早い復興をお祈り申し上げます。
 さて、全国国保地域医療学会を岩手県で開催するにあたり、一言ご挨拶申し上げます。
 ご案内のとおり、当学会は昭和37年に第1回国保医学会学術集会が開催されて以降、国保地域医療学会、全国国保地域医療学会と名称を変更しながら開催されており、本県での開催は、昭和47年の第12回以来2回目となります。
 全国学会の開催経緯につきましては、昭和29年に本県において「岩手県内直診医師懇談会」が開催され、直診医師研修会を経て、昭和33年6月に「岩手県地域医療研究会」に拡充、改組されました。この動きを契機として、昭和33年11月に東北各県の国保直診により「社会医療東北学会」が発足し、その後、昭和35年10月に開催された「第3回社会医療東北学会」において、「社会医療全国学会の開催を要望する決議」が行われたほか、東北各県国保連合会で組織する東北地方国保協議会からも国保中央会に対し、国保直診医師の全国学会開催要望が出され、その実現に向けた動きが急速に進展した結果、昭和37年に第1回目となる全国学会が開催されたところです。
 このような本県における地域医療の取組み等を踏まえ、今回の学会は、メインテーマを「地域包括医療・ケアで地域の『絆』をより強く」、サブテーマを「地域医療学会発祥の地『イーハトーブ』から未来へ発信」として開催するものです。
 岩手県は県土が広く、交通アクセスや医師不足など多くの課題を抱え、医療提供体制の確保に苦難の道を歩んできました。県中西部の沢内村(現西和賀町)はかつて、豪雪、貧困、多病・多死という悪条件下の中で全国初の乳児死亡ゼロを達成し、その後も保健と医療の一体化を図るなど、地域包括医療の魁となりました。
 時代は進みましたが、地域の医療を取り巻く環境は少子高齢化や過疎化などに加え、新興感染症への対応など益々厳しさを増しております。これからも国保診療施設が住民の身近な医療を担い続けるために、「地域医療」が産声を上げたこの地で語り合い、地域包括医療・ケアの更なる飛躍の機会になるよう期待しております。
 さて、本県は、宮沢賢治や石川啄木を育み、世界文化遺産の平泉、橋野鉄鉱山、御所野遺跡をはじめ、歴史、文化、食などの魅力が溢れております。この機会に岩手の魅力を存分に堪能していただければと思います。
 開催地の盛岡市においては、米紙ニューヨーク・タイムズに「2023年に行くべき52カ所」の一つとして紹介されてから、海外からの旅行客に加え、国内からの観光客も増加している状況であります。秀峰岩手山や周囲の山並みを背景に、北上川をはじめとする幾筋もの清流が市内を流れ、秋には鮭が遡上し、冬は白鳥も飛来する豊かな水と緑に囲まれた街であります。また、「わんこそば」「盛岡冷麺」「盛岡じゃじゃ麵」などの独自の麵文化も発達しておりますので、是非、ご賞味いただければと思います。また、復興道路・復興支援道路の整備により、県内各地への移動もしやすくなっております。是非、三陸沿岸部にも足を延してもらい、東日本大震災から13年と半年余りが経過した被災地復興の今の姿を感じとっていただければ誠に幸いです。
 結びに、本学会の開催にあたり多大なるお力添えをいただいております関係者の皆様方に深く感謝を申し上げますとともに、実り多き学会となりますことを祈念いたしまして挨拶とさせていただきます。